声明・談話

司法書士の裁判外代理権に関する最高裁判決を受けての会長声明

2016年(平成28年)7月14日
和歌山弁護士会
会長 藤井 幹雄

最高裁判所第一小法廷は,平成28年6月27日,認定司法書士の裁判外代理権を定めた司法書士法第3条1項7号について「認定司法書士が代理することができる範囲は,個別の債権ごとの価額を基準として定められるべきもの」とする最高裁としての初めての解釈を示して上告を棄却した。これにより,司法書士の債務整理業務の一部が不法行為にあたるとして,元依頼者である和歌山県在住の第一審原告ら家族に総額約金237万円の損害賠償を命じた大阪高等裁判所の判決が確定した。

本件最高裁判決は,司法書士が受任できる法律事務の範囲を明確にするとともに,その範囲を逸脱してなされた司法書士の法律事務が違法であるとした高裁判決を維持したものであり,当会として,評価したい。

本件は,法律専門職同士の職域争いであるかのような報道もなされているが,そのような観点でとらえるべき問題ではない。

法律が,法律事務を取り扱うことについて一定の制限を設けているのは,法律事務を処理するための一定の能力を担保することにより,国民が不利益を被ることを防止するとともに,司法制度に対する国民の信頼を確保するためである。したがって,法律専門職が法律で許された権限の範囲を超えて職務を行い,依頼者に不利益を与えるようなことは断じてあってはならない。

本件判決を踏まえ,弁護士及び司法書士が,司法制度の中において担うべき責務を果たすことにより,国民にとってよりよい司法制度を構築されなければならない。当会としても,今後より一層国民の権利擁護のため努力する所存である。