声明・談話

いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明

2017年(平成29年)2月27日
和歌山弁護士会
会長 藤井 幹雄

平成28年12月15日、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)が成立した。同法は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の設置を推進することが観光及び地域経済の振興に寄与するとの理解をもとに、一定の条件の下でカジノを合法化するものである。

しかしながら、法案審議の段階から当会が指摘しているとおり、同法には多くの問題点がある。これらをあらためて確認すると、次のとおりである。

1 ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題及び青少年への悪影響

我が国ではもともとギャンブル依存者の割合が高く(2013年の厚生労働省調査によれば、成人男性で約8.8%、同女性で約1.8%)、カジノの解禁はこれに拍車をかけるとともに、多重債務の新たな要因となる可能性がある。また、同法の施行によって、観光地にカジノが存在することとなると、ギャンブルに対する青少年の抵抗感が薄れ、健全な育成を阻害するおそれがある。

2 暴力団の関与及びマネー・ロンダリングの問題

暴力団が新たな資金源としてカジノへの関与を企図することは、容易に想定されるところである。また、カジノがマネー・ロンダリングの道具として利用されるおそれも否定できない。

このような懸念を払拭することなく、わずか2週間(衆議院委員会ではわずか6時間)という短い審議時間で成立した同法には、内容・審議のあり方の両面で問題があるといわざるを得ない。

また、各紙報道によれば、和歌山県は、カジノを含むIRを積極的に誘致する姿勢を示している。しかし、建設候補地とされる和歌山市の市民に対し同市が実施したアンケート調査(平成29年1月実施、対象者571名、回答率約76%)によれば、「和歌山市にIRを誘致することになればどう思うか」との質問に対して、「反対」「どちらかといえば反対」は合わせて47.8%となっており、「賛成」「どちらかといえば賛成」の41.6%を上回った(なお、同市が昨年おこなったアンケート結果からは、反対意見は2.9ポイント増加し、賛成意見は2.7ポイント減少した)。

建設候補地の自治体の住民がこのような意思を示したことは、カジノ設置に対する国民の不安のあらわれであるといえる。

よって、当会は、「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める。