声明・談話

和歌山県及び和歌山市へのカジノの誘致に反対する会長声明

2017年(平成29年)6月16日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

平成28年12月15日、一定の条件のもとでカジノを含む統合型リゾート(IR)を合法化する「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)が成立した。これを受け和歌山市長は、平成29年2月15日の会見で「IR施設誘致の実現に向けた取り組みを進める」と述べ、市内への誘致に乗り出しており、和歌山県知事も、同年5月9日の会見で、誘致の候補地を和歌山市南部の人工島「和歌山マリーナシティ」に一本化すると表明した。

しかし、平成29年2月27日付「カジノ解禁推進法に反対する会長声明」でも指摘した通り、カジノ解禁推進法には、①ギャンブル依存症患者・多重債務者のさらなる拡大、②青少年への悪影響、③暴力団の関与及びマネー・ロンダリングの問題等、複数の問題点がある。和歌山市民に対し同市が平成29年1月に実施したアンケート調査でも、和歌山市へのIRの誘致について、反対意見が賛成意見を上回っている。

和歌山県及び和歌山市が、「カジノ解禁推進法」における問題点・懸念を解消することなく、特に、ギャンブル依存症に対する具体的な対策を講じることのないままカジノ施設を誘致しようとする姿勢は、到底容認することができない。

ここで、和歌山県知事及び和歌山市長は、ギャンブル依存症対策として、カジノ施設は外国人専用とし、日本国民のカジノ施設への立ち入りを制限すべきと発言している。しかし、この考えには、以下のとおり問題がある。

平成26年10月7日、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)においてカジノ解禁推進法の法案内容が議論された際、日本国民のギャンブル依存症対策として、カジノ施設の利用は外国人に限定するとの修文案が加えられた。ところが、同年10月10日、IR議連は、カジノ施設の利用客を外国人に限定すればカジノ施設の運営が成り立たないとの批判を受けて修文案を撤回し、日本人のカジノ施設利用について、入場制限や入場料徴収などの条件付きで認める方針とした。即ち、カジノ施設を外国人専用とすることは法案審議の段階において否定されているのであり、日本国民のカジノ施設への立ち入りを制限するという考えは、極めて非現実的なのである。

また、仮にカジノ施設を外国人専用としても、先述①~③の問題点が払拭されるわけではない。ギャンブル依存症患者の拡大などカジノ施設のもたらす弊害は、利用者が外国人であっても同様である。そもそも、日本人の利用を制限すればよいという見解は、カジノが害悪であることを自認するものにほかならないといえよう。

以上の次第であり、当会は、和歌山県及び和歌山市へのカジノの誘致に対して反対する。