声明・談話

修習給付金の創設に関する改正裁判所法の成立にあたっての会長声明

2017年(平成29年)7月19日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

平成29年4月19日,司法修習生に対して修習給付金を支給する制度を創設する改正裁判所法(以下「本法」という。)が成立した。これにより,第71期司法修習生から給付金が支給されることになる。

本法改正は,司法修習生に対する給付が実現したという点において,その経済的負担を和らげ,法曹志願者の減少を食い止めるための大きな一歩となり得るものであって,当会はこれを高く評価する。

即ち,そもそも,司法制度は,社会に法の支配を行き渡らせ,市民の権利を実現するために不可欠な制度である。そして,法曹は,その司法制度を担う人的基盤であることから,司法修習においては,法律実務に対する知識,技法の習得のみならず,高い職業意識及び倫理観の習得も求められる。そのため,従来,司法修習生には,兼業が禁止され,修習専念義務が課せられるとともに,司法修習生に対しては,司法修習の上記公共的役割に鑑み,国から戦後60年余にわたり給与が支給されていた。しかし,平成23年11月にこの給費制が廃止され修習資金を貸与する制度が実施されることとなったが,司法修習生の多くは大学や法科大学院で多額の奨学金の貸与を受けており,その上で修習資金の貸与を受けることは,心理的経済的負担が極めて重く,これが法曹志願者激減の一因ともなっていたのである。

本法改正にご尽力いただいた関係各位には,心から感謝申し上げたい。

もっとも,本法改正によっても,なお課題が残る。

まず,給付額に関して,本法では基本給付として一律月額13万5000円,住居給付を必要とする者には最高で月額3万5000円とされているが,司法修習生が修習に専念できる経済的基盤として必ずしも十分とはいえず,増額に向けた検討が必要と思われる。

また,本法改正では,貸与制のもとで採用された新第65期から第70期の修習生(以下「貸与世代」という。)に対しては何らの対策もなされていないことから,これら貸与世代は,修習時期が異なるだけで,無給での司法修習を強いられたままとなっており,他の世代と比べて看過し難い不公平が生じている。

当会は,司法制度を担う人的基盤の充実に向け,引き続き政府及び関係諸機関と連携して,これらの課題を克服すべく取り組む所存である。