声明・談話

地方消費者行政の一層の強化のための国による継続性のある財政支援等を求める会長声明

2017年(平成29年)11月22日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

近年、全国の消費生活センターに寄せられる消費者被害やトラブルに関わる苦情相談件数は、90万件前後と高水準で推移している。とりわけ、高齢者の消費者被害やトラブルが増加の一途をたどっており、判断力が低下した高齢者の弱い立場につけ込む悪質商法・詐欺商法が深刻さを増している。しかも、実際に消費者被害やトラブルにあった人の中で消費生活センター等の行政の相談窓口に相談・申出をした人はわずか7.0%にとどまっており(消費者庁「平成29年度版消費者白書」)、年間90万件に上る苦情相談件数は、あくまでも氷山の一角に過ぎない。

このように消費者被害の実態が深刻さを増す中で、被害の発生を未然に防止し、また、事後的に救済するために、地方消費者行政の一層の充実が求められている。

とりわけ、地方消費者行政の財政基盤の確保は、極めて重要な課題である。現在、地方消費者行政の財政基盤は、地方消費者行政推進交付金等の国の支援により支えられている。しかし、地方消費者行政推進交付金の対象は、2017年度(平成29年度)までの新規事業に限定されており、継続性が確保されていない。多くの地方公共団体の政策判断が必ずしも消費者行政重視に転換していない中、財政基盤の脆弱化は地方消費者行政の後退を招くことになりかねない。

地方消費者行政の財政基盤を引き続き確保し、充実していくためには、地方消費者行政推進交付金の対象事業を2018年度(平成30年度)以降の新規事業も適用対象に含めるよう同交付金の実施要領を改めるか、又は、地方消費者行政の体制・機能強化のための新たな特定財源を立ち上げることが必要である。

また、消費生活相談情報のPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)登録、重大事故情報の通知、法令違反業者への行政処分、適格消費者団体の差止関係業務など、国の業務と関連があり、全国的な水準を向上させる必要性が大きい業務が地方公共団体により担われていることに鑑みれば、地方財政法第10条を改正し、これらを担当する地方公共団体の職員・相談員の人件費等の相当割合を、国が恒久的に負担することとすべきである。

こうした財政基盤の確立とともに、国は、地方消費者行政における法執行、啓発・地域連携等の企画立案、他部署・他機関との連絡調整、商品テスト等の事務を担当する職員の配置人数の増加及び専門的資質の向上に向け、実効性ある施策を講ずべきである。

ところで消費者庁は、2017年(平成29年)7月25日、「地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の支援のあり方等に関する検討会報告書」を公表した。同報告書は、地方消費者行政の充実・強化に向けた今後の支援の在り方をまとめたものであるが、その目指す方向性は妥当である。国は今後、このような方向性を踏まえつつ、財政支援等の諸施策を更に具体化し、充実させることが望まれる。

以上の次第であり、当会は、国による継続性のある財政支援とさまざまな施策への実効ある支援及びこれらを通じた地方消費者行政の一層の強化を求める。