声明・談話

外国籍の弁護士を調停委員任命から排除しないことを求める会長声明

2017年(平成29年)11月22日
和歌山弁護士会
会長 畑 純一

近畿弁護士会連合会は、2005年(平成17年)11月に開催した近畿弁護士会連合会大会において、「弁護士となる資格を有する者、民事若しくは家事の紛争の解決に有用な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満のものであれば、日本国籍の有無に関わらず、等しく民事調停委員及び家事調停委員に任命することを求める。」旨の大会決議を採択した。

以後、大阪、京都、兵庫県をはじめとする近畿弁護士会連合会内外の単位弁護士会において、毎年のように外国籍の弁護士を民事調停委員・家事調停委員に推薦するも、調停委員は公権力の行使または国家意思の形成に携わる公務員であるから、調停委員には日本国籍を要するなどとして、各地方・家庭裁判所が最高裁判所への任命上申を拒絶するということが繰り返されている。

しかし、民事調停法、家事事件手続法並びに民事調停委員及び家事調停委員規則は、日本国籍を有することを調停委員の資格要件とはしておらず、法令上、調停委員に関する国籍要件は存しない。そもそも調停制度は、市民間の紛争を当事者の話合いに基づき解決する制度であるところ、調停委員の職務は、専門的知識経験や社会生活上の豊富な知識経験に基づき当事者間の互譲による紛争解決を支援することであり、公権力の行使にはあたらず、外国籍の者が調停委員に就任することが国民主権原理に反するとは考えられない。1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの間、日本国籍を有しない大阪弁護士会会員を西淀川簡易裁判所民事調停委員に任命していたという先例もあり、日本国籍を有しなくとも現実的に何ら支障がないことは明らかである。

にもかかわらず、外国籍であることのみを理由に調停委員に任命しないことは、法令に根拠にない基準を新たに創設するものであるのみならず、調停委員の職務内容を勘案することなく、日本国籍の有無で異なる取扱いをするものであり、国籍を理由とする不合理な差別であって憲法第14条に違反する。

2014年(平成26年)8月28日の国連人種差別撤廃委員会の総括所見において、人種差別撤廃条約との関係において、「委員会はとりわけ、家庭裁判所における調停委員として行動する能力を有する者を排除するとの締結国の立場及び継続する実務について懸念する。」とされ、「委員会は、締結国に対し、家庭裁判所における能力を有する日本国籍でない者が家庭裁判所における調停委員として行動することを認めるように、その立場を見直すこと」を、締結国である我が国に対して勧告している。

ところが、昨年も大阪弁護士会及び兵庫県弁護士会が推薦した外国籍弁護士の調停委員の任命が拒否されたほか、本年7月にも、京都弁護士会が民事調停委員として外国籍弁護士を推薦したにもかかわらず、同弁護士を民事調停委員に任命しないという事態が発生した。

よって、当会は、最高裁判所に対し、調停委員に推薦された者が外国籍であっても、積極的に任命上申するよう、下級裁判所に対して促すとともに、各単位弁護士会が民事調停委員及び家事調停委員規則の資格要件にしたがって各地方裁判所・家庭裁判所に推薦した調停委員を、日本国籍の有無にかかわらず採用することを求める。