声明・談話

最低賃金の大幅引き上げを求める会長声明

2018年(平成30年)6月8日
和歌山弁護士会
会長 山下 俊治

平成29年7月27日、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、平成29年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を行い、和歌山県の目安は、Cランクで24円の増額であった。そして、和歌山地方最低賃金審議会は、同年8月7日、和歌山県地域別最低賃金について、上記中央最低賃金審査会の答申に示された目安額と同額である24円の増額とする旨の答申を、和歌山労働局長に対して行い、その結果、和歌山県地域別最低賃金は24円増額の777円と改訂された。

我が国における最低賃金制度とは、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上」等を目的とするものである(最低賃金法第1条)。

しかしながら、昨年の最低賃金の引き上げ額は、「労働者の生活の安定」にも、「労働力の質的向上」にもつながるものではなく、不十分と言わざるを得ない。すなわち、時間額777円という水準では、1日8時間、月22日働いたとしても、月収13万6752円、年収164万1024円であり、実際の手取額は、社会保険料等がこれから控除されるため、更に少なくなる。

この収入では、労働者の生活を維持することは極めて難しく、病気や怪我などに備えて貯蓄に回す金銭すらない。これでは、労働者が健康で文化的な生活を営んだうえで、最低限の資産を形成することなどできず、労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を図ること等、到底望めない。

また、厚生労働省による平成24年国民生活基礎調査によると、貧困率(等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満の者の率)は、過去最悪の16.1%まで悪化し、平成27年の同調査でも15.6%と非常に高い水準のままである。

最低賃金の額が低額にとどまっていることが、性別や世代を問わず我が国で深刻化している貧困問題に直結していることは言うまでもなく、国民の賃金格差を是正し、貧困問題を解決するためにも、最低賃金の大幅な底上げを実現する必要がある。

また、政府は2020年までの目標として最低賃金の全国加重平均が1000円とすることを掲げているが、その目標を達成するためには全国すべての地域で1年あたり50円以上の引き上げが必要である。

以上より、当会は、中央最低賃金審議会、和歌山地方最低賃金審議会及び和歌山労働局長に対し、労働者の生活が安定し健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、和歌山県地域別最低賃金の50円以上の大幅な引き上げを求める。