声明・談話

法律事務所への捜索に抗議する会長声明

2020年(令和2年)3月26日
和歌山弁護士会
会長 廣谷 行敏

2020年1月29日,東京地方検察庁の検察官らは,刑事被疑事件について,関連事件を担当した弁護士らの法律事務所に立ち入って捜索を行った。

同弁護士らは,同検察官らに対して,押収拒絶権を行使して押収を拒否し,その前提として同法律事務所内の捜索を拒否する意思を明示していたにもかかわらず,同検察官らは同法律事務所の裏口から無断で事務所内に立ち入り,再三の退去要請を無視して長時間にわたり滞留した上,事務所内のドアの鍵を同行した業者に破壊させ,施錠されているキャビネットの鍵を同行した業者に解錠させて内容物を確認し,事件記録等が置かれている弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどして捜索を強行した。

弁護士には,業務上委託を受けたため保管し又は所持する物で他人の秘密に関するものについては,権利の濫用と認められる場合等を除き,押収を拒絶する権利が保障されている(刑事訴訟法第105条)。同条は,秘密を委託される業務及び業務者に対する社会的信頼を保護しようとする趣旨であり,秘密にあたるかどうかの判断は,委託を受けた弁護士の専権に属するものとされている。

そして,押収は拒絶できるが捜索は拒絶できないとすれば,捜索の過程で捜査機関において,業務上の秘密にあたる物の閲覧・識別をなし得ることとなり,刑事訴訟法第105条の趣旨が没却される。したがって,弁護士が押収拒絶権を行使した場合,押収対象物の捜索も許されない。

よって,今回の検察官らの行為は,明白に違法である。

また,被疑者及び被告人の防御権及び弁護人依頼権は憲法が保障するものであり,弁護人は被疑者及び被告人の権利及び利益を擁護するため最善の弁護活動をする義務を負うところ,対立当事者である検察官が,弁護人の権利を侵害する違法行為に及ぶことは,我が国の刑事司法の公正さを著しく害する。

当会は,違法な令状執行に抗議するとともに,同様の行為を二度と繰り返すことのないよう求める。