声明・談話

死刑執行に抗議し、死刑執行の停止を求める会長声明

2022年(令和4年)2月17日
和歌山弁護士会
会長 田邊 和喜

令和3年12月21日、東京、大阪、各拘置所において、計3名に対する死刑が執行された。

この死刑執行は2年ぶりのものであるところ、岸田内閣発足後初めてとなる執行で、かつ、古川禎久法務大臣が就任してわずか2ケ月での執行であって、内閣として死刑制度の存廃について十分な検討を行ったのか、疑問を禁じ得ない。

死刑は、人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であり、誤判の場合には取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。これは揺るぎもない事実である。

1980年代に再審無罪が確定した4件の死刑事件は、誤判・えん罪の危険性が具体的・現実的であることを認識させるものであった。今回の死刑執行には再審請求中の者もおり、再審請求者の弁護権・防御権の保障という観点でも問題が残る。

また、死刑が執行されることで、犯罪被害者・遺族において、犯行の動機を知ることが永遠に出来なくなるばかりか、加害者と対話をする機会を奪うことにもなる。悲惨な犯罪の被害者・遺族にとって、決して許すことのできない加害者への厳罰の思いがあることはごく自然なことであるとしても、それは、犯罪被害者支援の制度を今以上に改善することによって、対応するべきである。

当会は、これまで、再三死刑執行に抗議する声明を公表し、死刑執行の停止とともに死刑制度についての全社会的議論の場を設けることなどを求めていたものであり、日本弁護士連合会においても、第59回人権擁護大会(平成28年10月7日)において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、犯罪により生命を奪われた被害者遺族の支援拡充を求めると共に、刑罰制度が犯罪への応報にとどまらず、社会復帰に資するものでなければならないという観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の見直しを要請し、死刑制度の廃止を目指すべきであることを求めて来ているところである。

死刑廃止は国際的な趨勢であり、法律上及び事実上死刑を廃止している国は、141か国に上っている。こうした状況を受け、我が国は、国際人権(自由権)規約委員会、拷問禁止委員会や人権理事会から、死刑の廃止を前向きに検討するべきであること等の勧告を幾度も受けている。

それゆえ、今回の死刑執行は極めて遺憾である。

当会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて、政府及び法務大臣に対し、死刑に関する情報を広く社会に公開し、犯罪抑止効果や被害者遺族の感情・支援を含め、死刑制度の存廃について全国民的な議論を尽くして、死刑制度の廃止を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの間、死刑執行を停止することを求めるものである。