声明・談話

出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明

2023年(令和5年)4月28日
和歌山弁護士会
会長 藤井 友彦

本年3月7日、政府は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の改正案(以下「本改正案」という。)を国会に提出した。

入管法については、2021年の通常国会に改正案(以下「旧改正案」という。)が提出されたが、難民申請者の人権を侵害するおそれがあるなど様々な問題点が指摘され、当会も2021年(令和3年)5月14日付けで反対する会長声明を発出し、旧改正案は取り下げられた。

本改正案は、収容を回避する枠組みとして収容と監理措置のいずれかを選択できるとした上で、収容の要否を3ヶ月ごとに必要的に見直す規定を創設し、監理措置制度における監理人の定期報告義務を削除するなど一部修正を加えたが、旧改正案の基本的な骨格を維持した微修正にとどまるものであって、次のとおり旧改正案の重大な問題点は解消されていない。

基本的人権である人身の自由の制限は必要最小限度であるべきであって、現行法を改正するのであれば、まずは収容の要件及び収容期間の上限を定めた上で、裁判所によって収容の可否及び期間を審査する制度を創設すべきである。しかるに、本改正案は、旧改正案を維持し、収容と監理措置の選択を主任審査官の判断に委ね、収容に関する司法審査の導入や収容期間の上限設定を見送るものであって、現行の収容制度を抜本的に改善するものとはなっていない。

本改正案は、収容の要否を3ヶ月ごとに必要的に見直すという修正を加えたが、裁判所等の第三者に審査させるものではなく、当事者たる所轄庁が自ら検討判断するにすぎないのであって、不十分であるといわざるをえない。

本改正案は、旧改正案を維持し、支援者や弁護士らに対して、その立場と相容れない役割を強いる監理措置制度を新設している。本改正案は、監理措置制度における監理人の定期報告義務を削除するという修正を加えたが、主任審査官が求めた場合には監理人に報告義務が別途課されるものであり、不十分であるといわざるをえない。

本改正案は、旧改正案を維持し、難民申請者に対する送還を停止する現行規定について、送還停止の対象を原則2回目までの難民申請者とし、3回目以降の難民申請者は送還可能とするが、ただ、3回目以降の難民申請でも難民等と認定すべき「相当の理由のある資料」を提出した場合には送還停止の効力が維持されるとの例外規定を設けている。

この点、日本は諸外国に比べ、難民認定率が極端に低いことが指摘されており、実際には難民に該当するにもかかわらず難民認定されない例が相当件数あると推測される。実際、初回申請で認定されず、複数回申請後に認定される例も存在する。送還停止の効力の一部解除は、本来保護されるべき難民を誤って本国に送還してその生命・身体等を危険にさらすおそれがあり、ノン・ルフールマン原則(迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる国際法上の原則)に反するおそれがある。

また、上記例外規定であるが、この例外規定に該当することを理由に争う手続はないなどかかる重大な問題点は残されたままである。

本改正案は、旧改正案を維持し、必要性と相当性を欠く退去命令と罰則を新設している。しかし、日本で生まれ育った者や送還後に迫害を受けるおそれのある者など帰国することができない事情を有する人々まで刑事罰を科すおそれがあり、また、在留資格のない外国人を支援する者や事件を担当する弁護士が共犯として処罰される可能性もあるなど到底看過することができない。

このように本改正案は、旧改正案の重大な問題点が解消されることなく再提出された。また、2022年(令和4年)11月3日、国際人権(自由権)規約委員会は日本の第7回定期報告に係る総括所見を公表し、日本政府に対し、国際基準に則った包括的な難民保護法制の早急な採用や仮放免中の移民に対する必要な支援等の検討、収容期間の上限導入等を勧告している。

したがって、当会は、本改正案について抜本的修正がなされない限り、これに反対するものである。