声明・談話

特商法の抜本的改正を求める会長声明

2023年(令和5年)11月14日
和歌山弁護士会
会長 藤井 友彦

特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)は、1976年(昭和51年)に、前身となる訪問販売等に関する法律として制定されて以降、消費者と販売業者等のトラブルの実情を踏まえて繰り返し改正されてきた。2016年(平成28年)に改正が行われた際、その附則において、「政府は、法律の施行(注:2017年(平成29年)12月1日)後5年を経過した場合において、この法律による改正後の特定商取引に関する法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」と定められており、2022年(令和4年)12月をもってその5年が経過した。

令和5年版消費者白書によれば、認知症の影響等により判断能力の十分でない高齢者の消費生活相談のうち、訪問販売や電話勧誘販売によるトラブルは、約半数を占めている。また、社会の進展により、スマートフォンやSNSが普及したことに伴い、SNS関連の相談が増加し、インターネットによる通信販売等に関するトラブルに関する相談は、全体の3割弱を占めている。さらに、二十代からの相談においては、他の世代に比して、マルチ取引によるトラブルに関するものが高い比率を占めている。

上記改正後5年が経過した現在、このような状況を踏まえると、消費者被害の防止を実効あるものとするため、「所要の措置」として特商法を早急に改正する必要がある。

具体的には、次のような抜本的な改正が必要である。

(1)まず、特商法の規制する取引類型のうち、訪問販売及び電話勧誘販売について、現行法では、消費者が契約締結の意思がないことを示したときは、事業者による再度の勧誘は禁止されている。現在、一部の地方自治体では、独自に「訪問販売お断りステッカー」を作成し住民へ配布している。これらの取り組みは、高齢者等の訪問販売による被害・トラブルを防止することに極めて有効である。そこで、特商法においても、このような訪問販売を拒絶する意思を明らかにしたステッカー等の貼付等の事実をもって、契約締結の意思がないことを消費者が示したものとして、事業者によるこれ以上の勧誘が禁止されることを明文で規定すべきである。

また、電話勧誘販売にあっては、いわゆるDo-Not-Call制度、すなわち、電話勧誘を受けたくない消費者が電話番号を登録機関に登録し、当該登録者への勧誘を禁止する制度を設け、消費者が電話勧誘を受けることを拒絶することのできる仕組みを整備すべきである。

(1) まず、特商法の規制する取引類型のうち、訪問販売及び電話勧誘販売について、現行法では、消費者が契約締結の意思がないことを示したときは、事業者による再度の勧誘は禁止されている。現在、一部の地方自治体では、独自に「訪問販売お断りステッカー」を作成し住民へ配布している。これらの取り組みは、高齢者等の訪問販売による被害・トラブルを防止することに極めて有効である。そこで、特商法においても、このような訪問販売を拒絶する意思を明らかにしたステッカー等の貼付等の事実をもって、契約締結の意思がないことを消費者が示したものとして、事業者によるこれ以上の勧誘が禁止されることを明文で規定すべきである。

(2) 次に、通信販売について、近年、SNS上の広告やメッセージの閲覧を端緒とした消費者被害が後を絶たない。これらは、消費者の私的領域内に踏み込んで行われる勧誘と同視でき、もはやその不意打ち性の程度は、訪問販売や電話勧誘販売と変わりはないといえる。そこで、通信販売についても、訪問販売や電話勧誘販売と同様の行政規制や、クーリングオフ制度、不実告知による取消権といった民事規制が、全面的に取り入れられるべきである。

(3) 加えて、連鎖販売取引について、近年、暗号資産や、アフィリエイト等の副業から得られる物品又は役務を対象とした、いわゆる「モノなしマルチ」によるトラブルが後を絶たない。これらの勧誘もSNSなどを通じて行われることもあり、勧誘者の素性が明らかでないことも多い。

そこで、開業規制、すなわち国が連鎖販売取引業の適正性や適法性を事前に審査する制度を導入するべきである。さらに、近年、紹介料等の特定利益の提示による勧誘を、物品販売等の契約の後に行う、いわゆる「後出しマルチ」によるトラブルが増加している。これは、契約締結後、支払いができず困窮した状況に追い込んだ上で、特定利益を提示して販売組織から離脱させない、というものであり、その危険性は通常の連鎖販売取引と異なるものではない。そこで、この「後出しマルチ」も、連鎖販売取引の一類型として明文化して規制すべきである。

よって、当会は、国に対し、速やかに、上記のとおり、特商法を抜本的に改正するよう求めるものである。